「りつめい」 No.208 (われら立命人)より抜粋

 
・・・平成元年に父が突然無謀とも言える計画を始めたのである。
それは日本で最大級の望遠鏡を設置した私設天文台。
理由は省略させて頂くが一般的に天文台の運営は難しく、公共の施設でさえ問題を抱えるところは多い。
それでも現存する日本の天文台に対して大いに不満のある父は、敢えて個人経営にこだわっている。



・・・省略・・・


さてその天文台、完全なる開業にはまだ時間が掛かり、現在所有する広島県内最大の屈折望遠鏡や五棟のドーム等を用いて営業している。


・・・省略・・・


しかし、一般の方が個人的に来場されることはまだ少なく、平素は閑古鳥が鳴いている(笑)。
おまけに、本来天文が趣味の父であるから、ついついボランティアになることも多い。


そんな中、遠距離からお越し下さる天文愛好家のために民宿・食事処・喫茶まで開いてしまった。
しかも予約制の宿泊と食事は一日一組限定。チェックイン・アウトの時間も特にない。
のどかな自然に浸り、時間を忘れて心ゆくまで満喫していただきたいからだ。と言うのは表向きで、
従業員三人(両親と私)で手が回らないという説もあるが(笑)。


お客様がいらっしゃっても必要最小限のお構いしかしないが、それがかえって好評のようだ。
天文のお客様に至っては日の出と共にお帰りになることすらある。
理想が先行する故に収益が上がるどころではないが、お客様の笑顔を見ると満足してしまう。
なじみの客曰く、我が家はかなりの「お人好し」だとか。



・・・省略・・・


ここには立派な施設も高級ホテルのような料理もサービスもない。
しかし、のどかな風景に囲まれ広大な宇宙を覗いていると、日頃の雑踏を忘れて夢多き幼少時代に戻れるのかもしれない。

宇宙の真理からすれば我々の人生など針の先にも充たないが、
それでも自分の道を日々精一杯歩んでいる。
宇宙と語らうことで心を癒し、また新たな人生(夢)を見出せるような、そんな空間であれたらと思う。



日本中どこにもない天文台を目指し、我が家の立命人は今日も走る。
広島にお越しの際は是非お立ち寄りされたい。

最後に、若輩者の私にこのような機会を与えてくださった皆様に心より感謝を申し上げる。

 夢天文台アストロ 豊平天体観測所